くま社長閑話 Vol.266 「佳日」
3月26日(木)札幌、晴天なり。
素晴らしい朝を迎える。
昨日、終業式を終えた愛息くん、奥さんを地下鉄駅まで送迎し、
再度帰宅、出撃準備を始める。
今日はこれから新千歳、東京出張だ。
今年に入り、とある案件で既に4回目になる。
先週、銀座の定宿2階にある中華料理店でワーキングランチを
した後、新幹線に乗り、急遽、博多へ向かった。
親友の話をたっぷり聞くために。
この話、たっぷり聞かなくては、先に進まぬのだ。
前夜、新橋烏森の居酒屋でボクが急に言い出した、のだそうだ。
「よし、そんなら博多に行こう。」
ある意味、酔興とも言い換えることができるやもしれぬ。
しかしこの決断が、後にささやかな奇跡を生むことになるとは、
お釈迦様は気が付いておられたやも知れぬが、、烏森のカラスたちには、
まったく予断を許さなかった。
神様に出会ったのである。
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品川から乗り込んだ新幹線の中、まずは進行方向に対してくるり、
座席を回して、向かい合わせにシートアレンジをした。
親友とそのまた親友、3人のショートトリップなのである。
進行方向に背を向けた、指定席に腰をかけて、ふと隣の列のひとつ前の席に
目をやると、そう混んでいない車両内に、そこだけ乗客がひっそりと、座っていた。
そう、ひっそりと、だ。
ボクは、なまじ田舎から出てきたものだから、東京に住んでいるヒトたちに
とって、いちいちこんなこと、記述するのは興ざめなのだろうし、大人気ないの
だと重々、承知しているが、なんと言っても、神様に出逢ったんだから、ご容赦
願いたい。そして少なくともボクにとっては記述するに値する、重大でかつ、甚だ
ステキなエピソードだったし、本当はボクのココロのうちに大切に仕舞っておくのが
よいに決まっているのだが、久しぶりのくま社長閑話、どうか今回の閑話だけは
カンワだけに、記述に際しては関係各位、規制もご緩和願いたい。
また閑話、と云うことにさせていただいたのは、おこがましくも、大好きな
狐裡庵先生の名エッセー、「狐裡庵閑話」、から無断拝借させていただいて
おるつもりであるが、このステキなタイトルについては読んで字のごとく
「こりゃ、あかんわ」と云う、遠藤大人(たいじん)のユーモアあふれるセンスの
賜物であり、これと対等するには小生、余りにも不道徳、不謹慎、厚顔無恥、
大僭越と云わざるを得ないことも甚だ承知しているところであるが、まあ、
このくま社長閑話、稚拙な文章をどうか寛大なお心でご拝読賜れば
幸いこの上ないところである。
お声がけするのも相当、迷ったが、考えに考え抜いて、やはり、目の前に
いらっしゃるのに、お声がけもしない方が、余りにも失礼千万と、決起し、
おトイレの帰りにかこつけて、勇気を振り絞り、その席に歩み寄った。
「あ、あの、ぶしつけに甚だ失礼ですが、お礼を言わせていただいてもいいですか?」
「・・・・・、ん?な、なに?なになに?」
「日本のテレビとラジオを創っていただき、本当にありがとうございました。
ボクは北海道でテレビ、ラジオで飯を食っているものです。おかげさまで、
いまもなんとか飯を食えております。どこの馬の骨かわからんものが、
いきなりお声がけして失礼しました。感謝してます。本当にありがとうございます。」
「・・・・・・、ひやぁー、びっくりしたよぉー。ひやぁー、そんなこと云われたの
初めてだよぉー、なに、そーかい、北海道?どこだい、ねぇー?」
「札幌です。」
「そーかい、そーかい」
「あの、出てるんじゃなくて、作ってるほうなんです、他にイベントなど・・・」
「あぁーそーかい、たいへんだろぉー、ねぇー、いま、ねぇー、こういう時代だからねー。」
「しかしおかげさまで、北海道でもがんばってやらせていただいております。」
「いやぁー、そーかい、そーかい。ホントに、こんなこと言われたの初めてだよぉー、うれしいねぇー。」
「いきなりでホント、済みませんでした。」
「うんうん。」
ほんの1分30秒程の会話だった。
萩本欽一、欽ちゃん、大将である。
ボクにとっては神様、なのである。
厚手のジャケットにハンティングを深めにかぶってらした。
甚だ失礼ではあるが、そのお顔に刻み込まれたシワの数は、まさに
日本の放送の歴史、そのものである。
24時間テレビ「愛は地球を救う」1回目の放送は、小学生だった。
STVホールで募金を受け付ける、と云うローカルサスの告知に、
幼かったボクは感動して、お年玉やおこづかいの中から、一円玉や五円玉を
十円玉をかき集めて、親にせがんで、駆けつけたことを思い出した。
紅白の裏でめちゃめちゃやんちゃなことをやっていた、コント55号。
お茶の間の目を釘付けにしていた、欽ドン、欽ドコ。
仮装大賞の人情ぶり(審査員の得点に、あとちょっとを・・・・覚えていらっしゃるでしょう)。
間違いなく、日本を元気にしてきた、重鎮であり、それは国宝級である。
神様がまだ若かりし頃、その神様が、神様と仰ぐ、チャップリンの自宅に、
ノンアポで、どうしても会いたい、と云う企画に来る日も来る日も、挑戦して、
やっと出会えた放送をご覧になった方も多いだろう。
あの番組はボクにとって、鮮烈な記憶として残っている。
元祖、ノンアポ突撃なのである。
ボクはいてもたっても居られず、お声がけしてしまった。
そうして、本当にやさしく、答えられた。
新大阪でマネージャーさんと共に席を立った神様は、わざわざボクの席にいらして、
「今日はホントにありがとう。おたがいガンバろーねぇー、ねぇー。」
と、お声がけいただいた。
感激した。
ボクは確信した。
「やっぱり、ヒトに受け入れられるヒトは、やさしいヒトなんだ。そうして、やさしいヒトは
みんな、強いヒトなんだなぁ」と。
田舎の馬の骨、日記。
またいづれ。
2009-03-26 10:15
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