有限会社ステップス

STEPS.inc. Sapporo Japan



くま社長閑話 Vol.317 「やっとこさっとこ、・・・・。」

知らんかったっ!函館駅名物、みがき弁当。

物凄い書いてないわけで、いろいろな方々から、「どーなってんだぁー!」とお叱りのメールやお電話、また直接お会いした際に「えーかげんにせーやー」などと所謂叱咤激励の雨あられをいただいて、お蔭様で本当に多くの読者を持たせて頂いている実感を改めてひしひしと感じておった今日この頃、200万読者諸氏、いかがお過ごしか?齢四十三を過ぎ、もうそろそろ遠慮なく残りの人生を送ろうかと考えていた矢先、これまたいろいろあって、このくま社長、心も折れちゃいそーになりながら、打ちひしがれておったところ。その間、我が傷心のささやかなる心の支えとなった事例のひとつに、出張、があった。残りの人生、全てをかけて、仕事に打ち込む事が出来る、と云う、類まれなる機会に恵まれ、時代が時代ならば、ナントカの手習い、ここはひとつ、かつて取った杵柄、武芸の鍛錬に再度挑戦すべく、武者修行、熊野古道を柳生石舟斎との対面を心に誓い、口元をきっと引き締めて、懐手しながら黙黙と歩くところ、時は平成二十二年春、向かうは道南箱館、いまやJR北海道スーパー北斗、特急電車で僅か3時間余り、指定席に着座しうとうとしているうちに、気が付けば五稜郭、よだれでべろべろになってしまったワイシャツの肩口を尻目に、慌てて下車準備などと、ほうほうの体での情けないビジネスマン姿、よれよれのジャケットにボロボロの靴底、なんとも救い様のない有様は、人生を賭して仕事に向き合うサムライ魂など何処へやら、恥ずかしくて死んでしまいたい絶望の心持ちで一杯になったものである。商談も精一杯のギリギリ、お客さまからは物事の本質を突く強烈な言葉の往復ビンタを数発頂戴し、もうそれこそへろへろになりながら、帰途、再びJR函館駅にたどり着き、涙が頬を伝う前に、天高き空を見上げては、「じぐしょぉー。」などと呻き声を小さくあげ、列車の待つホームへひとり、トボトボ歩いておったところに、駅弁屋のおやじさんが、「いやぁー、アンタ、なにがあったかしらないけども、なにがあっても飯を食えば、忘れられるものだべさ。」などど、何故に小生の事情を察知しているのか、積年の接客と販売促進行為たる投げかけトークによって、まるでソナーでマリアナ海溝の底の深さを測定するが如く、このくま社長の傷心の深さまでも、測定してしまえる特技を有しているようでもある。空恐ろしくなったが一瞬、視線をそのシワだらけの弁当屋のおやじさんから、商品たる駅弁が並ぶワゴンにふと、落とした瞬間、わが目に飛び込んできたのは、「みがき弁当」のデコレーションパッケージ、そのシンプルなデザインであった。蓋を取らずとも瞬間的に察することが可能である。曰く、中身も相当にシンプル、であろう予感である。へろへろの中年ビジネスマンにとっては、彩り豊で具沢山、定番だがそれなりに値段のする幕の内弁当には手が届かないとでも察したのか、弁当屋のおやじさん、「・・・・・・・・・・・・・、あ、それ、うまいよ。うん、うまい。」などと販売促進を通り越し、既に手提げのビニール袋に空気を潜らせ、さも購入決定が如く、ひとつ手に取るではないか!いようし、かったろ、かったろ。どーせがっかりするはずさ。名物にうまいもんなし。そうに決まっている。へろへろのくま社長に最後の一撃を食らわせ、傷心のささやかな支えとなるはずの出張も、やはり、デモン、このちっぽけなオトコのショートトリップをさえ、見逃さなかったか!ええい、食ってやる、そうとも食ってやる。買うよ、買う、買えばいいんだろーさ。などと数秒間心の中でぶつぶつとささやきながら、これも運命、全てを受け入れる覚悟をしたんだろうさ、ハチ君、ぐじゃぐじゃ云うな、とまた別の自分の声も聞こえ始めて、「ああ、それ、ください。」と駅弁屋のおやじさんに口を突いて大きくはない声を伝えた。一瞬、にやりとした弁当屋のおやじさんの目を、くま社長、見逃しはしなかった。一体どういった了見なんだろうか、このおやじ。本当にうまい可能性も、数パーセント、でてきたぞ、こりゃ。或いは、まんまと原価率の一番低い、ペロペロ弁当にくちばしを伸ばしたな、このへろへろビジネスマンめ、うしししし。などと、ほくそえんでいやがんだ、このおやじ。などと、また数秒間の間、葛藤をさえ、したが、お気に入りのビジネスカバンからお財布を取り出して対価を支払おうとした、刹那、弁当屋のおやじさん、「うぢはねぇー、もともと明治から、この「みがき弁当」からはじまったんだ。函館名物っつえばー、みんな、イカだのホタテだの、だべ。ちがうんだあ、もともと函館はよ、鰊で栄えたもんだぁー。にいさん、あんたぁ、これが一番だからぁー。」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

----------------------------------------------------------------------------

感動の味、シンプルだがマリアナ海溝よりも深い、歴史と伝統の味。感謝。

動き出した札幌行き特急列車スーパー北斗の指定席で、じんわりと少量の涙が目に溢れた。

余りにシンプル、が、しかし、余りに深い味わい。

こんなスゴイ弁当、生まれて初めて食った。

-------------------------------------------------------------

このくま社長、我が残りの人生、果たしてここまでシンプルに、しかし本質を突いた深い味わいのあるものに成し得る事ができるだろうか?森町を過ぎたあたり、食べ終わった弁当ガラを捨てに、デッキへ出た際に車窓から見えた、砂浜越しの、内浦湾を尻目に悠々と青く澄み渡った空を飛ぶカモメに、「あほー、あほー」と笑われている気がしてならなかった。


2010-06-10 14:52 鉢直人


Comments

コメントはまだありません


このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。

くま社長閑話

Other Contents

STEPS はノルディーア北海道を応援しています

ステップスはノルディーア北海道を応援しています

STEPS INFO

〒060-0061
札幌市中央区南1条西4丁目13 日之出ビル 7F
電話 011-261-5583
FAX 011-261-3983