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くま社長閑話外伝代筆 Vol.222 「お家にて」

にゃおーん

我輩は猫である。名前はにゃおーん。
れっきとした、淑女。私が自分で名乗ったのよ。
ある夏の日。

最近は歳を取ったせいか、お家のあちこちで、ついつい、ゲボ、あ、いえ、嘔吐してしまうんですの。いえ、あなたも猫ならば、我ら猫族の特徴もご理解いただけるものとカタク信じておりますわ。先日は、自分のトイレの横で、やっちゃった。一昨日は、階段の上り口でやっちゃった。
今日は、食卓のイスの上で、やっちゃった。どうも最近、ドライフードがいけない。かりかり、大変香ばしく食欲をそそられはするの、でもどうにも歯が立たなくて、丸呑みしちゃんですのよ、わたくし。そうすると、ほら、ね、いいぇ、なに、その。夏には裏庭で青々とした草を、気分に合わせて、ちょっと、ね、できますでしょ。でも冬ともなると、ほら、ね、なかなか難しいでしょ、草を探すの。

ご存知かもしれないけど、私たち、キレイ好きでございますもの、いつも毛づくろいでペロペロ、嫌ね、こんな擬音語じゃちょっと誤解をされるかもしれませんわね。人間さまの言葉に置き換えますれば、こんな所でござんしょ。窮屈極まりございませんこと。私たち猫の間では、もっと情緒的でステキな言葉がございますのよ、え、聞いてみたい?嫌ねぇ、お恥ずかしゅうございますわ。では金輪際此れっきり、ここだけの事にしてくださいまし。後生ですからね。

「にゃおーん。」

もう、お馬鹿っ。恥ずかしいったらありゃしませんわ。もう此れっきり私の事なんか、きっぱりお忘れになってくださいまし。でもどうでした?ステキな響きでございましょ。え?なになに?あなたの仰ることがどうにもこうにもわかりませんわ。だっていま時分あなた仰ったじゃありませんこと。わたくしども猫のステキな言葉をお聞きになりたいって。わたくし、何か変な事申し上げましたかしら?ま、よろしゅうございますわ。忘れましょ、お互いにね。

嗚呼、ちょっと暇いただいてもよろしくて?なんだかちょっと眠たくなっちゃった。
だってわたくし、気が付いたら一日に十六時間も寝ちゃってたこともございますのよ。え?羨ましい?あなた、何を仰ってるの?どうにもこうにも、ちょっと陽だまりに横になって瞼を閉じれば良いだけの事よ。そんなに難しいことかしら。嫌ね、人間さまって。何がそんなにお忙しいのか、わたくし一向に存じ上げませんのよ。だって当家のご主人様、ご自分でくま社長、なんて仰っていらっしゃるけれども、わたくしに申し上げさせていただきますれば、どこからどう見たって、あなた、ありゃ人間さま以外の何者でもございませんことよ。兎角人間さまって生き物は、随分身勝手にお過ごしあそばされていらっしゃいますものでございますわね。でもあれでちょっと見所もございましてよ。なにせわたくしのおトイレのお砂、いつもキレイにしていただいてますの、ご主人さまに。だって、わたくし、お手手が、ご存知かしら?お砂のスコップを持つには、ちょっとお上品に出来ておりましてよ、なんだか上手に持つことが出来ない気がいたしますの。それにあの、ビニール袋って仰るの、あれは前にお家の床に一枚、ちょっと空気を一度くぐして膨らんでから、ちょっと萎んでくしゃくしゃになっていましたのが落ちてましたことがありましてね、いいぇ、どうもここの御宅のご子息が、なにやらご近所の奥さまから戴いたお菓子がたくさん入っていたのを、バリバリとそのご子息が全部食べちゃって、ほったらかしにされてたご様子なんですけども、そのビニール袋ってのは、どうにもあたくしたち猫にしてみますと、見たことも聞いたことも無いものですから、カサカサって、あの音、聞きましたらなんだか、わたくしの敏感なお耳をくすぐるようで、ちょっと左の前のお手手でパンチしてみたら、また、カサカサって、動くものですから、あなた、カサカサって音がして、ふわふわ動くものを見たら、わたくしども猫にとって見れば、そのなんだか野生の本質、見た様な心地がいたしましてね、もう、居ても立ってもいられませんもの、ま、わたくしもお馬鹿ねぇ、気が付きましたら、二十分も、そのビニール袋ってもんと、じゃれあってしまいましたのよ。駄目ね。ですから仮にお砂のスコップをわたくしのお手手の裏にございます、肉球って仰るの、わたくしたちはあれをわたくしたちの間では、「にゃおーん。」って申しますのですけれども、あの間に挟めて、もしも、持つことが叶ったと致しましても、そのビニール袋にいれなくちゃいけませんでしょ、そうなったらあなた、もうわたくし、お砂のスコップなんて、持って、あ、いいぇ、挟んでなんて、いられませんもの。あのカサカサって、音。どうにもこうにも、琴線にふれちゃいますの、嫌っ、恥ずかしいわ。もうそうなったら、おトイレのお砂なんてもう、そりゃ、あちこちに飛び散らかしちゃって、もうなにがなんだか訳がわからなくなってしまって、それこそ猫ふんだりけったり、って楽曲がございますのでしょ、人間さまのお使いになられるあの、びっくりするほど大きな音がでる、黒い大きな箱。アンヨが三本、なにやら金色のゴロゴロがついてらしてね、わたくし前に一度、その大きな黒い箱の蓋がぱっかり、空いているのを拝見いたしまして、ちょっとなんだか面白そうな予感がいたしましてね、そのぱっかり空いた蓋の中に入ってみたことがありますの。いえわたくしたち、猫って、どうにも狭い隙間やちょっと囲みのある場所って、嫌いじゃないみたいで、お分かりに?ええ、そうなんですの、それでちょっとワクワクしたキモチで入ってみましたら、あなた、なんだか鉄で出来た紐がいっぱい、その箱の中に敷いてありましてね、わたくし、歩く度に、びよーん、ぽろりん、びよーん、ぽろりん、ってフシギな音がいっぱいしましたの。どうにもその鉄の紐がいっぱい並んでおりますところの紐と紐の隙間に、お手手のお爪が、ほら、引っかかっちゃいましてね、なんだかとても歩き辛い思いを致しましたのを思い出しましたの。あ、そうそうその猫ふんだりけったり、みたいな楽曲ね、そのご子息がそりゃ物凄い大きな音を出して、なんだか塊見た様な大きな音を、これまた物凄い速さでガラポンチャッチャ、ガラポンチャッチャって丁度その時、ご子息が奥さまに向かって、「猫ふんだりけったり」見た様な事仰ってましたの、きっと、あの大きな大きなそして早い早いあの楽曲は「猫踏んだりけったり」なんて、わたくしたち猫にとって、なんとも不愉快無礼千万な、でもなんだかわたくし判りますのよ、あの楽曲の雰囲気ってございますでしょ、わたくし猫から言わせて戴いても、わたくしども猫が、なにやら急にびっくりさせられるようなことがございましたときはいつでも、あの「猫ふんだりけったり」見た様な動き、いたしますものね、お恥ずかしゅうございますわね。ですからビニール袋だけは、後生ですから、わたくしの近くにどうぞ置かないでいただきたいの。
わたくしだって、女ですもの、自分のおトイレくらい、自分でいつもキレイにしておきたい気持ちはございますけれども、そんなことで、どうにも出来ない訳でございまして、どうにもこうにもお恥ずかしいばかりなんでございます。ですから、あのくま社長、なんて脂下がった気障な言い方をご自分でなさるうちのご主人さまも、あれはあれで結構お優しいところもございまして、いつもお世話になってますものですから、感謝いたしておりますのよ。でもここ三日ほどは、嫌ね、わたくしもちょっと歳を取ってきたものだからかもしれませんけども、ゲボ、あ、いえ、毛玉吐きをあちこちでして仕舞うものですから、ご主人さまに逢わす顔もございませんので、矢張りここはいつものようになんにもなかったフリをして、さ、寝ましょ、寝ましょ。

おやすみなさいませ、ご主人さま。

あ、あなたもね。


2008-03-31 02:02 鉢直人


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